12.6. ヒトの遺伝子治療
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病気に苦しむ人の遺伝子を改変することにより病気を治療することを目的として行われる遺伝子組換え措置 症例によっては、突然変異した遺伝子を正常な遺伝子によって置換し、または補完することもある
このケースでは、遺伝性の疾患を永久的に治せる可能性がある
また、病気を回復させるのに必要なだけの遺伝子を挿入し、発現させる場合もある
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1. 正常な人の遺伝子を遺伝子組換え技術により単離し、クローン化する 2. クローン化した遺伝子を無害なウイルスなどのベクターに挿入する 3. 作製した組換えウイルスを患者に注入する
ウイルスはヒトの遺伝子を含むゲノムを、患者の細胞のゲノムDNAに挿入する
そこで、患者の体内で正常な遺伝子が転写され、翻訳されて、待望のタンパク質を生産する
理想的には、細胞に挿入された正常型の遺伝子が患者の生涯にわたって細胞とともに増殖し続ける
遺伝子治療が成功すれば、患者は実質的に完治する
この致命的な遺伝性疾患はある遺伝子の欠陥により発症する
患者はこの遺伝子にコードされる酵素が存在しないため免疫系の発達が阻害され、生涯を無菌室で過ごすことが必要となる この患者は骨髄移植(成功率60%)を行わなければ、正常な人ならば難なく回避できる微生物による感染症のため速やかに死亡する 2000年以降、先天的に重症複合型免疫不全症を患う22人の子供が遺伝子治療により回復し、遺伝子治療の有効性を示す強力な成功例となった
この治療の一環として、研究者は定期的に患者の血液から免疫系細胞を取り出し、原因遺伝子の正常型の対立遺伝子を組み込まれたウイルスに感染させた後、再び患者の身体に戻した
残念ながら、4人の患者が白血病を発症し1人が死亡したことから、この画期的な治療法への称賛は長続きしなかった このため、遺伝子治療は前途有望ではあるものの、安全性と有効な使用法に関する根拠は非常に薄弱
遺伝子治療については、新たに設けられた厳しい安全指針の下で、精力的な研究が続けられている